ギフト・ショーのジビエウォッチ

9月3~5日、東京ビックサイトで開催された「第100回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2025」および関連展示会に出展された3件のジビエ関連の出展を取材した。

このギフト・ショーは、LIFE×DESIGN、グルメショーなどを併催している。贈答用が意識された高付加価値型商品の出展が多いのが特徴であり、その意味で高価格化しやすいジビエは相性が良いのかもしれないと思ったのが昨年秋のグルメショー。商工会議所関連のジビエ出展があり、トークショーも開催されるなど、一定の盛り上がりを感じさせた。

しかし、今春の開催では、グルメショーへのジビエの出展はわずかに1社。その他、ギフト・ショーでは2社見られたのみ。通常の食品展示会に出展するより効果が高いと思われたのは見当違いだったのかもしれない。しかし、出展していた3社ともにきらりと光る特徴があり、ジビエの可能性を感じさせるものだった。

伊吹山の魅力を詰め込んだジビエ

グルメショーに登場したのは、滋賀県米原市の飲食店「I ma art+cafe」(アイマートカフェ)。昨年から鹿の食害が原因で起きた土砂崩れが有名な伊吹山のお膝元で、猟師さんたちの「獲った獣の生命を粗末に扱いたくない」という思いに共感して、鹿のカレーを開発し、カフェでの提供を始めた。人気メニューとなったため、今回、カレーの冷凍パックを製品化し初お披露目。「感触を見て、今後の販売を考えたい」とアイマートカフェの貴詠さんは話す。

伊吹山は8合目までは緩やかな山で、鹿の肉も筋肉ばらずに柔らかいのが特徴だという。雪が深く、水が豊かなのも伊吹山の特徴。山にはサイカチやタラノキなど薬用となる木々、薬草が多く、それらを餌にするため、味が良くなるのだと猟師さんが話しているそうだ。

また、猟師さんの勧めで、ソミュール液やチップにそうした薬草、薬木を使用した鹿肉ジャーキーも開発した。地元の資源を利用した、通り一遍でないジャーキーは秀逸。色からして違ううえ、味わいも滋味深い。ヒット期待の商品だ。

ワン・アイデアを加えて差異化、“買いたくなる”ペットフード

ギフト・ショーの「Life with Pets」のコーナーでは、ジビエのペットフードを扱う事業者「XAXA(ザザ) PREMIUM PET FOOD」が出展。XAXAは3年前に長野県で創業したペットフードメーカーで、県から鹿肉利用の打診を受け、「そんなに被害が大変なら」と2025年1月から鹿肉のオヤツの開発に取り組み、現在犬猫用8種類のジャーキーをラインアップしている。

スタンダードなジャーキーばかりでなく、ひと工夫された製品が目立つ。ひとつは鹿ミンチのジャーキー。ミンチから作っているため簡単に手で割けるのがポイントだ。ジャーキーといえば固いのが当たり前だが、これなら小さくちぎって与えることができ、食が細くなったシニア犬にも与えやすい。また、気道、ハツ、筋膜のジャーキーも珍しい。ほかではなかなか見られない部位を製品化することで差異化を図っているようだ。原料は長野市ジビエ加工センターから仕入れているという。
また、パッケージも秀逸。平田沙織社長みずからが筆を執って描いたという、長野県の四季を描いた4種類のイラストが美しい。

地域産業のコラボで新しいジビエの地平

最後に紹介するのは、ギフト・ショー「LIFE×DESIGN」の一角に設けられた企画展「町工場NOW」に出た、鹿革×蝶番のコラボという一風変わったアイテム。蝶番を製造する伊豆市のメーカー「伊藤金属総業」が、市内の鹿革作家・松本天太さんとコラボ。ブランド「TunagaR」を立ち上げ、第一弾として名刺入れを発表した。伊藤金属総業の伊藤徹郎社長は、鹿害から松本さんを知り地場産業同士でつながって認知拡大をしようと発案。伊藤姻族産業にとっては初めての消費者向けのプロモーションとなる。伊藤社長は「革としんちゅうはどちらも時とともに色、風合いの変化を楽しめる。相性の良い製品になった」と話している。地場産業のマッチアップで商品価値を高め、訴求していくスタイルは、今後のジビエのあり方の参考になる。