防鹿柵がブナの成長低下と土壌微生物の多様性低下を防ぐ

九州大学、宮崎大学、岡山大学からなる研究グループの研究によって、鹿を防ぐ防護柵が、ブナの成長低下、土壌微生物の多様性低下を防ぐ可能性が示唆された。12月5日に3大学連名でリリースされたもので、元となる2つの論文は『Journal of environmental management』『Forest Ecology and Management』に掲載されている。

これまで、鹿による森林への影響の研究は下層植生に限られており、樹木、土壌微生物についての知見が不足していた。そこで研究グループは、熊本県白髪岳の防護柵内で未撹乱のポイントを選出し、柵の内外でブナの成長速度と土壌微生物の多様性を比較した。

それによると、柵の内外の樹齢が同じブナで、直径に有意に差があることが分かった。差が生じはじめたのは下層植生が劣化した時期と推測され、鹿の食害が影響していることが示唆されたという。また、柵内では下層に維持されている矮性竹が、ブナの成長を維持しているとの知見も得られたとしている。

土壌微生物については、柵外と比較し、柵内では真菌類の多様性が維持されていることが確認されたという。柵外では下層植生が減少し、また、鹿が土を踏み固めることで土壌中の有機物が減少、土壌侵食のリスクが高まることも考えられる。

本研究は、鹿の食害の影響について欠けていた知見を埋めるもので、改めて防護柵が森林の生物群集の保全に有効であることを示しており、今後の鹿対策に役立つことが期待される。

防鹿柵の設置はブナの成長低下と土壌微生物の多様性低下を防ぐ~シカの過採食による森林衰退を止める有効な手立てとして期待~〔九州大学, 宮崎大学, 岡山大学〕
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002743.000072793.html

論文1:ブナの成長の比較に関する研究
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jenvman.2024.123146

論文2:土壌微生物相の比較に関する研究
DOI:https://doi.org/10.1016/j.foreco.2024.121993